
結論から言うと、『ママがおばけになっちゃった!』という絵本が駄目というより、のぶみ先生本人が一度目をつけられてしまったから、あれこれ言われているという印象を受ける。
まずは読んでみよう。
ママがおばけになっちゃった!|全ページ読める|絵本ナビ : のぶみ みんなの声・通販
https://www.ehonnavi.net/ehon/108593/
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公式【絵本読み聞かせ】ママがおばけになっちゃった!/のぶみ【続編も好評発売中!】(講談社の創作絵本)
Youtubeに読み聞かせまであり、非常に好感が持てる。本は読まれるためにあるものだ。叩かれているのに引っ込めないのはえらい。
私はわりと前に批判意見を目にし、自分の目で判断しようと思って一度読んだことがある。ユーモアがあって面白いと感じた。最初の方に笑いがあるので、引き込まれて最後まで一気に読めた。嫌われている人だけど、絵本作家としての才能は間違いなくあると思う。
・署名運動について
「ママがおばけになっちゃった!」の対象年齢の引き上げ等を求める方々による署名運動がある。
講談社宛 嘆願書 – 署名内容概要・作品の問題点・よくいただくご意見・代表より
https://stopmamaoba.jimdofree.com/%E5%98%86%E9%A1%98%E5%86%85%E5%AE%B9/
講談社と内閣府宛の要求があるのだが、正直めちゃくちゃなことを言ってると思った。
>シリーズ3作品の対象年齢表示を、現行の「3才から」より「12才から」へ引き上げること。
12歳では中学生になってしまう。そこまで引き上げる必要はないと思う。
私はペットが死んでしまう「ずうっと,ずっと,大すきだよ 」という話を小学一年生(7歳)の時に習った。
平成4年度版(平成4年~平成7年使用)1年 | 教科書クロニクル 小学校編 | 教科書クロニクル | 光村図書出版
https://www.mitsumura-tosho.co.jp/chronicle/shogaku/h4/1nen.html

これがトラウマになったという話はなかなか聞かない。『ママがおばけになっちゃった!』の適正年齢引き上げを求める人は、『ずーっと ずっと だいすきだよ』についてはどう思うのだろう。死ぬのが親でなければ良いのだろうか?
よくいただくご意見 – 署名内容概要・作品の問題点・よくいただくご意見・代表より
https://stopmamaoba.jimdofree.com/%E3%82%88%E3%81%8F%E3%81%84%E3%81%9F%E3%81%A0%E3%81%8F%E3%81%94%E6%84%8F%E8%A6%8B/
上記のページに「親が死ぬ絵本も、子ども向けではない絵本も他にありますよね?」という質問があり、
>親が死ぬ絵本に関してもほとんどの物は読後のケアまで考えられた内容で、最後は子どもに寄り添う形で終わりますが、”ママがおばけになっちゃった”にはそのどちらもありません。 『母の死』と言うタブー視された題材で、子どもの心に寄り添うこともなく死のみを殊更に強調した内容は他に類を見ないものです。
という回答があるが、あまり納得できなかった。寄り添っていないとも「死のみを殊更に強調した内容」とも思わない。おばけになったお母さんと主人公の少年が語り合う場面があるので、寄り添っていると言えると思う。このあたりは個人の感想の範疇だろう。
私は小学生の時にはほとんど絵本を読まずに児童書ばかり読むようになっていたから、絵本は幼稚園と小学校に置いて欲しい。幼稚園や小学校に置かず、対象年齢を12才以上にするのはあまりに過保護過ぎる。作者はもちろん読者への嫌がらせに近い。
個人的には、特殊な本を除いて書籍の適正年齢なんてどうでもいいと思う。適正年齢を引き上げて欲しいという人は、普段から本を読んでいるのだろうか? 私は子供の頃から本をよく読んでいたが、適正年齢の表示など気にしたことがない。内容も考慮されているだろうが、主に漢字をどの程度使っているかどうかが主な基準だと思う。あくまで目安でしかない表示になぜこだわるのか不思議である。
私が通っていた小学校のクラスの本棚に「絵本 地獄」というややグロ怖い本があった。低学年の時に、その絵本をみんなで集まって一緒に見て楽しんでいた。怖いもの見たさ的な感じで。いい思い出になっている。
※表紙自体ややグロなので閲覧注意。
絵本 地獄――千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵 | 白仁 成昭, 中村 真男, 宮 次男
子供の頃に、特定の本を読んではいけないなどと大人に言われた経験はない。もしあれば大きなお世話だと感じただろう。
ネットで「トラウマになった作品について語ろう」みたいな話題がたまにあるけど、語ってる人たちは楽しんでいるのではないだろうか。真面目なトーンで何かの作品に触れたことをいつまでも後悔してる人はあまりいないと思う。
ただ、大人でもバッドエンドがどうしても嫌いとか、地雷がどうとか、嫌いなタイプの作品に絶対触れたくない人が一定数いるのは認識している。そのあたりの研究が今後進めば面白いと思うが、現時点で企業等に強く配慮を求めるのは違うと思う。
話を戻して、以下は署名に関する講談社からの返答。
講談社への問い合わせ(6/26)ご報告 – 署名内容概要・作品の問題点・よくいただくご意見・代表より
https://stopmamaoba.jimdofree.com/%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%95%8F%E3%81%84%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B-6-26-%E3%81%94%E5%A0%B1%E5%91%8A/
講談社も対象年齢の決め方くらいは回答してあげたら良いのではないかと思うのだが、一切まともに取り合いたくないのだろうか……
>絵本が原因で精神的障害がでていると医師から診断書をもらっている方もいますがそれはどうですか?
という質問があるが、これは一般的に通用するのだろうか。本の中で自分のプライバシーを侵害されたとか侮辱されたとかなら分かるが、ただ本を読んで精神的障害が出たというのは、子供のこととはいえかなり無理筋な気がする。
講談社に対象年齢表示の改善を求めるなら、のぶみ先生以外の本もある程度調べてから改善を要求するのが筋だと思う。
そうでなければSNSで炎上した人物の職場に電凸してやめさせろと言うのと変わらないし、実際そういう行為に近いと思う。「騒がれて面倒臭いから、のぶみ先生の本は今後はあまり出版したくないなぁ」と、出版社に思わせる目的もあって署名した人もいるのではないだろうか。子供のためを思うなら、なるべく角を立てずに、自分の子供の通う幼稚園や保育園に『ママがおばけになっちゃった!』を読み聞かせしないようにお願いする方法を広めるのが先だと思う。
「一人を批判するのではなく全ての悪を注意して回れ」ということではない。嫌われがちな人の特定の作品だけが叩かれていると、正義が薄くいじめのように見えてしまうからだ。
のぶみ先生の名前を最初に認識したのは、「あたしおかあさんだから」の件だ。
あたしおかあさんだから 歌詞「横山だいすけ」ふりがな付|歌詞検索サイト【UtaTen】
https://utaten.com/lyric/iz18020518/
この件を発端にのぶみ先生の言動が注目され、一気にネットの嫌われ者になってしまった印象がある。「あたしおかあさんだから」の歌詞について、不快に思う人がいるのは分かる。まあ実際歌詞のような思いを持っているお母さんもいるかもしれないなぁという感想で、私は炎上するほどだと思わなかった。
もっとさりげない歌詞ではあるが、私が子供の頃に聞いた「きっとしあわせ」の歌詞も「あたしおかあさんだから」とテーマが近いと思う。これも子供向けの番組で流されていた。
きっと しあわせ/しゅうさえこ-カラオケ・歌詞検索|JOYSOUND.com
https://www.joysound.com/web/search/song/217552
「ブラッドリーの請求書」という道徳に使われる教材が一時期話題になり、否定的な意見が目立ったが、あれも子供から親へ感謝させるような話だった。ただ、あの話を知って感動したという声もそれなりに見られた。創作物の受け取り方はさまざまである。私はそんなに好きではない。だが感動したという意見を言いづらい雰囲気になるまで叩くのは反対だ。
のぶみ先生が何かした時に、これをやったのが他の人ならどうか? 他の似た作品とどう違うのか? という点に気をつけて考えることが必要だと思う。
『ママがおばけになっちゃった!』批判は、のぶみ先生への憎しみが先行し過ぎている部分があるように思われる。