『私はだんだん氷になった』の感想

私はだんだん氷になった [ 木爾 チレン ]

価格:1,870円
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最近、ネットの作品で「何でも許せる人向け」という注意書きがあるようだが、そんな感じの作品。おすすめだけど、万人向けではないのでちょっとおすすめしづらい。
アイドル、栗城史多さん、Vtuberなど、現実にあった話題や要素を非常にうまくまとめている。ここまではっきり最近の人物がモデルだと分かりやすい小説はあまり読んだことがなく、こういうことをする勇気がすごいと思った。しかも面白い要素として、自分の作品の中に違和感なく組み込むとは。
以下、多少ネタバレを含む。


なりきりロールプレイのところは、読むことを頭が拒否するw
性的加害、動物系、いじめと読むのがつらい場面が他にもあるけど、私はなりきりがなぜだか一番つらい。経験はないので、自分の黒歴史を思い出すわけではないのだが。
主人公の好きなアイドルは、どうやら二宮和也さんがモデルのようだ。匂わせとか結婚でファンがショックを受けた事件も描かれている。二宮さんはYouTubeを始めるなど、嵐の中では比較的意識が外に開かれている人だという印象を受けるが、この小説を読んだらどう思うのだろう…… 心配になるくらい容赦がない。
この小説には栗城史多さんがモデルになったであろう、信春という登山家が登場する。そうとは知らずに読み始めたので、「これ栗城さんじゃん!」と興奮してしまった。
現実の栗城史多さんと信春の違いが興味深かった。
信春はエベレストに残ったままだが、栗城さんの遺体はすぐに収容されたという違いがある。
栗城さんに妻子はいなかった。小説の中で娘がすごくひどい目に遭っているのが気の毒なのだが、信春自体はかなりいい役回りを与えられている。
信春は元芸人である。栗城さんは違うよね?と思って調べたら、NSCという吉本興業の芸人養成所に入学した経験があった。そんなところもわりと忠実で、思わぬ時に栗城さんの理解が深まった気がする。
てんしとあくまの友情に感動した。