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娘の遺体は凍っていた 旭川女子中学生イジメ凍死事件 [ 文春オンライン特集班 ] 価格:1,540円 |
いじめられていた人が自殺した場合、自殺だけが原因だと決めつけるのは好きではない。しかし、この件の場合は「性的な辱め」が行われていて、10人以上に煽られて川に飛び込まざるを得なかった事件があるということで、いじめによる死と言い切って良いと思う。
最近はひどいいじめの話をそれほど聞かなかった気がするが、やはりいじめは存在するのだと認識させられた。
これだけのいじめがあっても当初、該当中学校では「いじめはなかった」としていたという。いじめの内容が内容なだけに、爽彩さんが生きているうちにおおごとにして解決をするというのも難しいだろうと思った。中学校がもっと真摯に対応していれば違ったかもしれないが…… 爽彩さんが川に飛び込んだ事件を地元紙に報じられ、それについて中学校が「謂れのない誹謗中傷」だというプリントを配布したという(爽彩さん家族は転校後で知らなかった)。これは中学校の対応があまりにもひどい。尾木直樹氏によると、任期中に何か事件が起こった校長は、叙勲の対象や良い再就職先を得られる立場から外れるから、事なかれ主義に陥りがちなのだそうだ。
本書には無関係な人たちが犯人と誤解され、名前や写真をネットで拡散されてしまった話も出てくる。当時、そういうことをやっている人たちを実際に見かけて、良くない流れだと思った。親しい人間からの誤解というのも絡んでいたようだ。他に、爽彩さんのお母さんに対する誹謗中傷や、爽彩さんが誰かに連れ出されたのではないかという陰謀論もあったらしい。
加害者生徒へのインタビューはオンライン上で読んだ記憶があった。
臨時保護者会全文が興味深い。校長の回答はほぼ「現在回答できない」で、参加した保護者にとってはがっかりするものでしかなかったのではないかと思うが。保護者の生の声は見るべきものがある。子どもがいじめのあった中学に在校していることで変な目で見られること。教頭が児童ポルノ的な写真を証拠として抑えておいて、警察に提出したのかも分からないこと。そういった不安や不満の声が上がっている。
お母さんの手記が最後に載っている。小学校の校長先生はとてもいい人で、定年でいなくなってしまう時、爽彩さんは号泣したそうだ。
小学校で、自分は叱られるようなことをしていないから一人だけ先生に謝らなかったら、病院に行くように勧められ、結果的に自閉症スペクトラムだと分かったというエピソードも紹介されている。普段から見ていて気がついたのだろうけど、その流れで病院を勧めるのは不適切なような。当たり前だけど、色んな先生がいる。