『もう時効だから、すべて話そうか』の読書メモ

神戸連続児童殺傷事件を起こした酒鬼薔薇聖斗こと少年Aに関する話が興味深かった。
この中で、少年Aの両親について、
p177

そうした衝撃や失望感は、事件後に転居と転職を繰り返し関西の地方都市でひっそりと暮らすAの両親も同じだった。Aに同居を拒否されながら自分たちの手記の印税全額と毎月六万円を遺族に支払うなど支援を続けてきただけに、弁護士ともども、「これで積み上げてきた被害弁済も、本人の社会復帰もパーだと取り乱している」(知人)。

という記述があった。
「衝撃や失望感~」は、Aが遺族の気持ちを無視して手記『絶歌』を出したことに関する話。
『「少年A」この子を生んで… 父と母悔恨の手記』の印税が遺族に支払われていないという噂をたまに見かける。豪邸を建てたとか、少年Aの弟たちの進学費用にしたとか。
たしかWikipediaでもそんな記述があったような気がしたので調べてみた。
>この書籍の印税は20年で合計1億円近くに達し、全てが事件の被害者及び遺族に支払われたと本には書いてあるが被害者には1円も入っておらず、母親は他県に家を購入して印税生活をしている。
この記述は、「悪質な荒らし」として現在は取り消されている。
最新版では、「この書籍の印税は出版から20年で合計1億円近くに達し、全てが事件の被害者及び遺族に支払われた」とある。
この事件を追っている一橋文哉さんが書いているように、印税や賠償金を払っているというのが事実だろうと思う。発行元の文藝春秋が被害者遺族に支払われていないことを無視し続けるとも思えない。
自分の読書記録を見てみたら、『絶歌』を出した太田出版の本はけっこう読んでいて、面白かった本が多かった。

他にも色々。漫画も出していて幅広い。有名な本は『家族喰い』かな。

遺族に許可を取れないなら出版しないで欲しかったなあ。何もたくさんいい本を出版している会社が出さなくても…… この出版社からはもう買わない!読まない!とは言えないので本当に複雑な気持ち。
で、重信房子の『はたちの時代 60年代と私』を出版してまた物議を醸しているという……
Aは賠償金をいくらか支払っていたようだが、被害者遺族を無視して本を出版したなら、更生したとは言い難いと思う。迷惑をかけた自分の家族にも本当に悪いと思っているのか疑問である。
p177

この三年間は仕事をせずに執筆に没頭していたといい、その生活費の一部数百万円を出版社から借金し、返さなければならないうえ、今後の生活費のメドも立っておらず、不透明な形となっている。

自己顕示欲の強い悪質な人はなるべく無視したいのだが、更生する可能性はあるのかという点で今後が少し気になる。


松山ホステス殺害事件の犯人の福田和子が逃げ回っていた理由に、刑務所でレイプされた経験が関係あるのではないかという話があった。(p203-204)
松山刑務所事件 – Wikipedia
こんな事件があったとは知らなかった。少し同情してしまう。まあ、刑務所が怖いなら、入ることになるような真似をしなければいいのだが……